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そのバスに乗るか見送るか

  • 執筆者の写真: sign Any
    sign Any
  • 10月29日
  • 読了時間: 3分
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日々を過ごしていると、大小様々なバスが自分のもとへやってきます。

そのバスを待っていたわけでもなく、そこにバス停がないのにもかかわらず。


ある日は、非常にゆっくりとしたスピードでバスが到着し、とても憂鬱そうな表情の運転手が乗降口の扉を億劫そうに手動で開閉します。なかなか走り出さないそのバスは、しばらく経ってからようやくノロノロと走り出しました。


乗客はそれなりに乗っていますが、どの乗客も表情がすぐれず、うつむいているか席にもたれかかるようにしてぼんやりと窓の外を見ていました。

蛍光灯が点いている車内ですが、薄暗く、チカチカと不規則に点滅する蛍光灯もいくつかありました。


そのバスに乗る私も、憂鬱で重い気持ちを背負いながら隅の席に力なく座っていました。

エンジン音もウィンカーの音ですらも、どこか力なく響き、虚しく車内に響きます。

運転手も乗客も誰もかれもが溜め息をつく、とても鬱屈とした雰囲気のバスでした。

不思議とそのバスから見る外の景色はどれも灰色に見えるものでした。



またある日は、バスが猛スピードでやってきて、けたたましいブレーキ音とともに到着しました。

運転手が荒っぽく乗降口を開け、早く乗れと言わんばかりにこちらを睨みます。

私が乗るや否や、乗降口の扉が閉められ、席に着くと同時に勢いよく走り出しました。


乗客は多く、どの乗客も顔を真っ赤にしてイライラした様子です。中にはイライラが高じたのか足を強く踏み鳴らす人、誰にともなく怒鳴り出す人もいました。

私も同様にイライラを抑えられず、乗客を睨み回すように座っているのでした。


とても空気が悪く、一触即発のピリピリした雰囲気のまま猛スピードで乱暴にバスは走り続けます。

そのバスの窓から見える行き交う人々は、なぜだか全員敵のように見えたものでした。



でも、ふとそれらのバスから降りた方が良さそうだと思った時は、早めに降車ボタンを押して降りるようにしました。

降りてみると、さっきまで自分を支配していたイライラなどが落ち着いてきた気がします。


またある時は、それらのバスが私のもとにやってきても、顔を横に振って乗らないことにしました。

その方が、なんだか楽になるような気がしたものです。


そして、運転手や他の乗客がみな自分だったことを思い出すこともありました。

そのバスを呼んだのは、他でもない自分だったのかもしれません。



感情や思考は、突然であったり繰り返しやってくるバスのようなものかもしれません。

乗るも降りるも、見送るも、意外と自分に選択権があるかもしれません。


勿論、悲しみのバスなど、時には敢えて気の済むまで乗り続けることが必要場合もあると思います。急いで降りてしまうことでかえって長引く感情があるかもしれません。

それらのバスに乗ることや乗り続けていることが良い悪いではないように感じます。



皆さんのもとへやってくるバスは、どんなバスでしょうか。

それは、いったいどこへ向かっていくバスなのでしょうか。



今日は天気が良いのもあってか、穏やかな運転手が運転する小振りなマイクロバスがやってきました。

温かい珈琲を味わいながら行こうと思います。






 
 
 

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